整形外科で走り出せ!

若手むけの知識やおすすめの教科書・本を紹介していきます。 薄っぺらい文章での紹介は書きません。自分で買って、読んで、調べたことをブログに記載しています。

4月から整形外科専攻医になる君たちへ

4月から整形外科を志し、走り出す若手に向けて伝えたいことを書きます。



教授や准教授など、医局や病院のお偉い先生方とは言ってることが違うかもしれません。
でも、曲がりなりにも、ある程度、整形外科医として経験を積み感じたことを記載します。



・手術に入る前には、助手であろうとも必ず予習を行って下さい。時間がなくても、少なくとも解剖や展開の勉強だけはしておくと、効率よく習得できます。


・積極的に手を動かして下さい。執刀医でも助手でも、次に何をすべきか考えることで、手が動くようになります。


・使用機材の仕組みや設計思想、使用方法の勉強にも労力を割いて下さい。整形外科の手術では、何かしらのインプラントを使用します、病院ごとに選択が違うのは当たり前で、なぜそのメーカーの製品を使っているのかを考えて下さい。また、メーカーの営業の方から、お話を聞くのはとても勉強になります。


・可能であったら、大小いくつかの病院で勤務したり、外来をやらせてもらって下さい。病院ごとに得意な症例や、手術適応の違いを感じることができます。また、僻地とまでは行かないにしろ、田舎の病院を経験すると、医療格差を感じると思います。医療を考える上で大切なことです。



いろいろ書きましたが、新しい整形外科医達が真摯に励んでくれることを祈っています。

整形外科 おすすめ教科書紹介⑤

膝の専門家でなくとも、外来で遭遇する確率が比較的高い前十字靱帯断裂。

そのACL断裂・損傷の診療で重要なポイントを集中的に記載した本。

著者は、世界的な前十字靭帯再建術の権威でもある史野根生先生。

 

 

内容は解剖~診断~手術まで一通りの流れが記載されていて、手術に関する記事も詳細で役に立つことは間違いない。

 

でも、最も秀逸なのは、MRI診断における画像所見。

完全断裂でわかりやすい画像はもちろんのこと、部分断裂の微妙な所見や副次所見まで十分に解説されている。加えて、MRI画像上、ACLの緊張が十分に保たれていて、著者本人が診断に苦慮した症例までも載っている。

正直微妙な画像が載っている本は意外と少ないけど、実臨床ではこっちのほうが多いくらい。

 

膝の専門家を目指す医師だけでなく、外来でACLについて悩んだことのある整形外科医には読んでほしい1冊。

 

価格もそれほど高くなく、読みやすいボリュームなので、ぜひ手にとって見てください。

 

 

 

腱板断裂

腱板断裂についての診断・治療のまとめ

 

まずはわかりやすくフローチャートから

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                                                                     関節外科VOL.37 No.7(2018)より引用改変

 

一つ一つ解説していきます。

外傷機転があって、肩関節痛+挙上困難なことが明らかであれば、外傷性の腱板断裂を疑い、早期にMRIで画像診断を行うべきです。

 

また、外傷機転がなく変性断裂をみとめ、疼痛コントロール不良であったり、機能障害がある場合はやはり手術適応になってしまいます。

加えて、疼痛コントロールが十分にできて初めて、機能障害が明確になるので、しっかりと行うべきです。

 

問題なのは、中断裂以下で機能障害も疼痛コントロールも良好な場合です。

患者さん本人にとっては、痛みも機能障害もなければ、受診するモチベーションは低くなりがちであり、なかなかフォローが難しいため、腱板断裂が放置され手術を検討するタイミングを逸することも多いと考えられています。

それなのに、無症候性であろうとも多くの症例で有症状化したり、断裂部が拡大したりするという報告が多いです。

 

高齢者は別として、若年者・活動性の高い患者さんには、今後手術が必要となる可能性があることを十分に説明して、定期的に受診してもらうことが大切です。

 

 

 

※上記に付け加えて、肩関節の徒手検査を十分に練習することは迅速な診断につながります。

 

腱板損傷・断裂をチェックするテストとして、empty can test、Drop arm sign、Lift off test等は必須です。(ただし、感度特異度もさほど高くはありません、、、)

 

整形外科 おすすめ書籍

おすすめな書籍紹介

 

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                           メディカ出版サイトより引用

 

メディカ出版の「整形外科SurgicalTechnique」

毎号、テーマに沿ってかなり深掘りした内容が記載されている。

写真も豊富で非常に理解しやすい。

多くの医局で定期購読されていたりすると思うので、時間があるときに目を通しておくと、知識が多方面からアップデートされる。

 

特筆すべき点の一つ目は、メディカ出版サイトで書籍購入者のみが閲覧できる手術動画。動画のクオリティには高低あるけど、これほど幅広く公開されているのはこのサイトだけだとおもう。

二つ目は、「ヨメディカ」という購読プラン。これは、バックナンバーを含めて2010年以降の記事すべてが電子版でいつでもどこでも読める。そして、バックナンバー検索機能も充実していて、効率的に情報収集できる。情報によっては、もはや下手に論文検索するよりも、こっちのほうが良いときもある笑

 

特に、若手の整形外科医はちゃんと読むようにしてほしい一冊!

 

例えば、↓の半月板特集の本。

半月板断裂・損傷の縫合について、ほぼ網羅している。

inside-out、outsaide-in、all-inside、加えてMMPRTに対するPull out修復術、Discoidの半月形成、Centralizationまで、、、

一般的な縫合法はすべて学習できる。

詳細な手順までは書いてないこともあるけど、大まかに流れを理解するには最良かな。

 

 

骨折の分類について

骨折の分類について

 

骨折分類については、ほんとに多くのものがある。

たくさんの人が提唱するし、治療法の変遷で廃れていく分類法もある。

でも、やはりゴールドスタンダードなものも存在する。

 

現在、骨折外傷で広く使われているのはやはりAOによるもの。

上腕骨を1として、一つ一つの骨に体系的に番号が振り分けられ、さらにサブタイプもシステマチックに数字とローマ字で記載できる。

 

スマートフォン向けのアプリが有名だけど、実はブラウザ版もある

AO Foundation Surgery Reference

って、グーグルに検索させると、本家AOのサイトでアプリと同じように分類できる。

 

加えて、ブラウザの自動翻訳機能を使うと、日本語で読むことができて楽できる。

まあ、でも、英語の勉強のためにも翻訳せずつかうのもありかな笑

 

 

ちなみに、分類するだけなら最低限この本↓でも事足りる。

専門医には物足りないけどね

整形外科 おすすめ教科書紹介④

おすすめの教科書④

 

手根管症候群の神経剥離、橈骨遠位端骨折、手指骨ピンニングなどなど、、、

基礎的な上肢の手術手技が学べる

 

本書に付随した動画が公開されており、同時に参照することでイメージアップが非常に行いやすくなると思う

 

そして、個人的なポイントとして、屈筋腱・伸筋腱縫合について基礎から記載されている点に評価がおける

骨折治療について、若手向けに基礎から記載された本は比較的多く存在するが、腱縫合についてはあまりない。津下法・Lim&Tsai法の記載は、これまで見た書籍で一番丁寧。

整形外科 おすすめ教科書紹介③

おすすめ教科書③

 

骨折髄内釘治療マイスター

 

プレートマイスターの姉妹書。

髄内釘バージョン。

 

 

こちらもプレートマイスター同様に、各メーカーのインプラントの特徴まで触れられていたりする点に好感が持てる。

また、整復操作の解説が非常に詳細に記載されていることも特徴であり、ぜひ一読すべき一冊である。

 

特に、専攻医一年目、これから転子部骨折にネイル入れます!って人にはぜひ読んでほしい笑