後十字靱帯損傷について
後十字靱帯(PCL)
以前、前十字靱帯(ACL)についての教科書↓を紹介したので、今回は後十字靱帯(PCL)について、色々記載しておこうと思います。
(前十字靱帯についてのおすすめ教科書はこれ)
病態
PCLは、脛骨の後方移動を制限する役割があり、典型的な外傷機転として交通事故などでおこる”ダッシュボード外傷”があります。
症状と診断
PCLが損傷することにより、関節腫脹はほぼ必発します。また、高エネルギー外傷であるケースも多く、膝関節周囲に骨折を合併することも多くあります。そして、PCLの機能が失われるため、脛骨の後方への制限が甘くなり、不安定感を訴えることが多いです。
診断は多くの場合、MRIで行われます。また、身体所見としては、膝関節屈曲位での脛骨の後方落ち込み現象”sagging徴候”が確認できることもあります。
治療
急性期のPCL単独損傷はの治療については、これまでは保存療法が基本でした。PCLは血流が豊富である等という背景から、多くの研究で保存療法が良好な成績を示していたことは事実です。
しかし、近年、保存療法のみの場合、長期的に変形性関節症のリスクが高いことも報告されています。そのため、近年は手術を選択する施設も増加しつつあります。これには、手術デバイスの機能向上や手技の熟達化も理由にあると思われます。
この流れは、かつての半月板と同じ潮流だと思います。半月板断裂もかつてはひたすら切除が行われていましたが、現在は可能であれば縫合して機能を温存することが推奨されています。短期的にみると、半月板切除の成績が悪くなかったのは、PCL損傷と同じです。
現在、関節鏡下でも多くの便利なデバイスが存在します。PCL損傷と診断したならば、安易に保存療法のみを行うのではなく、活動性を考えた上で手術療法の選択肢もピックアップし、然るべき時は熟達した医師に紹介すべきと思います。