整形外科で走り出せ!

若手むけの知識やおすすめの教科書・本を紹介していきます。 薄っぺらい文章での紹介は書きません。自分で買って、読んで、調べたことをブログに記載しています。

整形外科専攻医 スターターパック!!

 これまでバラバラに紹介してきた本の中で、専攻医一年目の先生方にお勧めの書籍をまとめてみました。ぜひながめて見て下さい!!

 

※外傷手術編

 

まずはじめはマイスターシリーズ!!

髄内釘編とプレート編で分かれていて、非常にクリアカットな解説が印象的です。

だれにでもわかりやすく、各メーカーのインプラントの特徴までしっかりと記載されています。

骨折プレート治療マイスター

o-rumed.hatenablog.com

骨折髄内釘治療マイスター

o-rumed.hatenablog.com

 

 

お次は有名雑誌の一つ「Monthly Book Orthopedics」創刊30周年を記念して刊行された書籍!

アトラスという名前の通り画像がふんだんに記載されていてわかりやすいです。最初は意外と困ることの多い、体位どりや手術記事まですべての症例で記載されているところも専攻医にはおすすめなポイントです。

骨折治療基本手技アトラス

o-rumed.hatenablog.com

 

そして、外傷整形だけでなくすべての基礎となる解剖書!!

何回も紹介してますが名著中の名著!!

これさえあればどこでも展開できる(笑)それくらい頼りになる解剖書です。

展開する層を一層ずつアトラスにしてあるので非常にわかりやすく、頻用するアプローチはすべて載ってます!!

 

整形外科医のための手術解剖学図説

o-rumed.hatenablog.com

 

あと、ブログでは紹介してませんが、やっぱり基本のプロメテウスもおすすめです。

↑の手術解剖学図説ほど見るわけではないけど、いざって時に役に立ちます。

 
※外来編
 
外来編でまず紹介する本はこの2冊!!
 
「症状から一発診断!整形外科専門医はこう見立てる」
 この本は症状別に分類されてるので、鑑別疾患が非常にわかりやすくなってます。もちろん非専門医向けに書かれた本なので、すぐにもの足りなくなることもあるけど、最初はかなり役立ってくれる本だと思います!!
「運動器スペシャリストのための整形外科外来診療の実際」

 お次は、↑で紹介した本から少し踏み込んで、治療法が詳細に記載されている本です。秀逸なのが、保存か手術かというページに多くが割かれており、経験が少ないと迷うことの多い手術適応を考えるときに、非常に役立ちます!!

o-rumed.hatenablog.com

 

最後にMRIの教科書を!!

執筆者は放射線科医・整形外科医・病理医等、他分野にわたり、画像数も多く辞書として使うには最高の一冊です。

レントゲンよりも判断に迷うことの多いMRIでは、このような辞書的な教科書は必須です!!

 

関節のMRI

整形外科 おすすめ教科書紹介⑩

整形外科 おすすめ教科書紹介⑩

 

若手向けのおすすめ教科書紹介の第10弾です!

有名な本ですが、あえて紹介させて頂きます。

 

ERでの創処置 縫合・治療のスタンダード 原著第4版

 
文字通りERでの創処置のすべてが学べます。
創部の評価・洗浄デブリ・創閉鎖・抗菌薬・ドレッシング剤の選択まで、記載されている事項は多岐に渡ります。
 
特に秀逸だと感じた項目を列挙しておきます。
 
・創閉鎖の可否orタイミングの見極め方
・体系的なデブリードマンの方法
・専門科へのコンサルテーションの指針
・特殊な創の縫合テクニック(角、dog-ear、平行裂創など)
・被覆材の原則
破傷風、抗菌薬の考え方(予防的?、いつ?、なにを?)
 
整形外科医として当直をしているとき、簡単な外傷と遭遇することも多いと思います。上記のような項目で悩んだことのある方は、本当に多いのではないかと思います。
 
この項目について、明確に説明できる自信はありますか??
 
「なんとなく経験で、、、こんな感じで、、やってます、、、」って、ごまかしている
人はいないでしょうか?
 
少しでも心配だと感じるようなことがあるならば、教科書を読み体系的に学ぶべきだと思います。
そのような人にこの本は最適だと思い、紹介させていただきました。
ぜひどうぞ!!

整形外科 おすすめ教科書紹介⑨

整形外科 おすすめ教科書紹介⑧

 

若手向けのおすすめ教科書紹介の第8弾です!

 

[関節のMRI] 

 
整形外科領域で必要となるMRIの知識がすべて詰まった名著。
ページ数の関係で、第三版からは脊椎の項目が削除されてしまいましたが、その分、四肢関節の内容がアップデート・ボリュームアップされています。
 
 
解説
この書籍は、実際のMRI画像とにらめっこしながら、辞書的に使用されることが多いと思われます。
 
辞書として使用する上で秀逸な点は、MRI画像の説明だけでなく、その疾患の簡単な臨床所見、単純レントゲン/CTなどの副次的所見も多く記載されていることです。
普段見慣れていない部位のMRI所見を確認するとき、そのよう記載が非常に有用になります。
 
 
MRI画像を一心不乱に見ていると、つい画像所見だけで診断してしまいたくなりますが、臨床所見の記載があると、そのような気の迷いも軌道修正することができます。
 
また、完全に網羅されているとは言い難いですが、遭遇したら非常に困る腫瘍分野の記載も十分です。
 
MRIで苦手な分野がある若手の整形外科医にとっては、お守りになるような書籍だと思います。
ぜひ読んでみてください。

整形外科 おすすめ教科書紹介⑧

整形外科 おすすめ教科書紹介⑧

 

若手向けのおすすめ教科書紹介の第8弾です!

 
 この本は、有名な整形外科雑誌の一つ「Monthly Book Orthopedics」創刊30周年を記念して刊行された書籍です。実臨床において、参考書として如何に即戦力となり得るかという点を重視し、編集されています。
 ターゲットとなる読者層は、骨折治療の主軸として活躍する研修医~10年目程度の整形外科医となっています。
 
 テーマを絞り、自由投稿を受け付けないジャーナルとしての先駆者であった「Monthly Book Orthopedics」の記念刊行であることに矛盾せず、コンセプトが明確で良いと思います。
 
 本の特徴としては、題名に「アトラス」とある通り、画像がふんだんに使用されており、瞬時にコツが理解できるように工夫されています。
 
 骨折治療の各論として、上肢から下肢の骨折まで網羅されています。体位取りやセッティングまで記載されている点にも好感が持てます。整形外科医になり立てのころは、手術前のセッティングでさえ戸惑うものです。
 
 また、この本には骨折テーマ毎の最後に「手術記録」が載っています。まさに、我々整形外科医がカルテに記載する通りのものです。これは、他の書籍では見たことがありません。
 
 予習の時間がないときにはこの「手術記録」さえよめば、その手術の大枠はつかめるようになっています。これも、この本のコンセプト「若手整形外科医が瞬時にコツを理解できる」のとおりだとおもいます。
 
 さらにもう一点追記するならば、骨折治療で使われる複雑な機材も写真付きで載っています。機材の説明だけで、20ページ以上割かれています。骨把持器、整復鉗子、テンションデバイス、クランプ等、、、
 10年目の整形外科医であっても、こんな便利な機材があったのかと思い知らされることもあるかと思います。さらにワンステップ上のスムーズな手術を目指すために、一読しても良いかと思います。
 
 
 
 
 

後十字靱帯損傷について

後十字靱帯(PCL)

 

 以前、前十字靱帯(ACL)についての教科書↓を紹介したので、今回は後十字靱帯(PCL)について、色々記載しておこうと思います。

 

(前十字靱帯についてのおすすめ教科書はこれ)

o-rumed.hatenablog.com

 

病態

 PCLは、脛骨の後方移動を制限する役割があり、典型的な外傷機転として交通事故などでおこる”ダッシュボード外傷”があります。

 

症状と診断

 PCLが損傷することにより、関節腫脹はほぼ必発します。また、高エネルギー外傷であるケースも多く、膝関節周囲に骨折を合併することも多くあります。そして、PCLの機能が失われるため、脛骨の後方への制限が甘くなり、不安定感を訴えることが多いです。

 診断は多くの場合、MRIで行われます。また、身体所見としては、膝関節屈曲位での脛骨の後方落ち込み現象”sagging徴候”が確認できることもあります。

 

治療

 急性期のPCL単独損傷はの治療については、これまでは保存療法が基本でした。PCLは血流が豊富である等という背景から、多くの研究で保存療法が良好な成績を示していたことは事実です。

 しかし、近年、保存療法のみの場合、長期的に変形性関節症のリスクが高いことも報告されています。そのため、近年は手術を選択する施設も増加しつつあります。これには、手術デバイスの機能向上や手技の熟達化も理由にあると思われます。

 

 この流れは、かつての半月板と同じ潮流だと思います。半月板断裂もかつてはひたすら切除が行われていましたが、現在は可能であれば縫合して機能を温存することが推奨されています。短期的にみると、半月板切除の成績が悪くなかったのは、PCL損傷と同じです。

 現在、関節鏡下でも多くの便利なデバイスが存在します。PCL損傷と診断したならば、安易に保存療法のみを行うのではなく、活動性を考えた上で手術療法の選択肢もピックアップし、然るべき時は熟達した医師に紹介すべきと思います。

  

 

整形外科 おすすめ教科書紹介⑥⑦

整形外科 おすすめ教科書紹介⑥⑦

 

これから整形外科医として外来を始める人にオススメの2冊を紹介。

この2冊をうまく組み合わせることで、多くの初診はキレイにさばくことができるようになると思います!

 
1冊目
「症状から一発診断!整形外科専門医はこう見立てる」
外来での診断に特化した本。
メインターゲットは非整形外科医として執筆された本かもしれないけど、駆け出しの整形外科医には最良の本だと思う。
ありがちな疾患が幅広く、抜け落ちることのないように記載されていて、診断のポイントも的確。重要な疾患には多くのページが割かれていて、強弱もしっかりつけてある。
 
また、この本のミソは、疾患ごとではなく患者の主訴ごとに並べられている点で、まだ知識が浅く、問診ですぐに診断に近づくことが難しい人にとっては、かなり助けになる本だと思います。
(ちなみに、非整形専門医であったり、研修医にもこちらの本はオススメです。)
 
 
2冊目
「運動器スペシャリストのための整形外科外来診療の実際」

こちらは、先程の1冊目よりも、治療に関して詳細に記載してあります。

特に、保存療法について多くのページが割かれ、非常にわかりやすい。例えば、単純な足関節捻挫の項だと、診断~新鮮時治療のコツ~リハビリプログラムまで詳細に記載されています。

また、この本の最も良い点は、保存療法or手術の判断ポイントが載っていること。例えば、頚髄症や腱板損傷の患者等をどのタイミングで専門医に紹介するかは悩みもので、この本はその点に関しても、良いアドバイスをくれると思います。

 
整形外科一年目のみなさん、ぜひこの2冊を携えて、外来を乗り越えて行ってください!!

 

診療報酬改定 2022

2022 診療報酬改定

 

大腿骨近位部骨折 

骨折後48時間以内に手術が行われた場合、4000点が加算

 

来年度からの診療報酬の改定で、上記の変更がなされました。

手術自体が18000点くらいですので、かなり大きな加算になります。

ガイドラインに記載されている緊急性の項目を盛り込んだ形になると思います。

 

算定基準や施設基準はこんなかんじ。

 

[算定要件]
(1) 75歳以上の大腿骨近位部骨折患者に対し、適切な周術期の管理を行い、骨折後48時間以内に骨折部位の整復固定を行った場合に、所定点数に加算する。
(2) 一連の入院期間において区分番号「B001」の「34」の「イ」二次性骨折予防継続管理料1を算定する
場合に1回に限り算定する。
(3) 当該手術後は、早期離床に努めるとともに、関係学会が示しているガイドラインを踏まえて適切な二次性骨折の予防を行うこと。
(4) 診療報酬明細書の摘要欄に骨折した日時及び手術を開始した日時を記載すること。
[施設基準]
(1) 整形外科、内科及び麻酔科を標榜している病院であること。
(2) 整形外科について5年以上の経験を有する常勤の医師が2名以上配置されていること。
(3) 麻酔科標榜医が配置されていること。
(4) 常勤の内科の医師が1名以上配置されていること。
(5) 緊急手術が可能な体制を有していること。
(6) 大腿骨近位部骨折患者に対する、前年の区分番号「K046 骨折観血的手術」及び「K081 人工骨頭挿入術」の算定回数の合計が60回以上であること。
(7) 当該施設における大腿骨近位部骨折後48時間以内に手術を実施した前年の実績について、院内掲示すること。
(8) 関係学会等と連携の上、手術適応等の治療方針の決定及び術後の管理等を行っていること。
(9) 多職種連携を目的とした、大腿骨近位部骨折患者に対する院内ガイドライン及びマニュアルを作成すること。
(10) 速やかな術前評価を目的とした院内の内科受診基準を作成すること。
(11) 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)又は運動器リハビリテーション料(Ⅱ)の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出ていること。
(12) 二次性骨折予防継続管理料1の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出ていること。
(13) 関係学会から示されているガイドライン等に基づき、当該手術が適切に実施されていること。

                            厚生省ホームページより抜粋

 

結局、外傷を受けてる総合病院だとほぼ算定から除外されることはないと思います。

ただ、一つ気になるのは、前年の大腿骨近位部骨折の手術件数が60回以上であるということで、これは地方の小規模な病院だと除外されてしまう可能性がある。

こういう施設基準があると、外傷病院にさらに症例が集まる構図になりそうかもと思います、、、